freebee が実施する事業コンサルティングは、お客様と一緒になって商品やサービスを作り上げてゆく、所謂<モノづくり分野>を得意としています。
企業は社会の中で様々な活動を行っていくわけですが、最終的には「企業側が提供する価値」=<製品>と、「お客様が対価を支払う価値」=<商品>がイコールになった時、モノづくりの結果としてビジネスが成立します。
世の中は常に変化してゆきますので、時代とともに人々の欲求も変化しますし、同じ景色を見ている競合他社のマーケターが新しい商品・サービスをどんどん提供してきます。自社が提供する製品価値と、お客様が受容する商品価値が一致しなくなれば、その商品・サービスは存在意義を失い、世の中から消えてゆきます。
私は20年間の企業での事業・マーケティング経験を踏まえ、モノづくりの構造が下記のような3層に分かれていると考えています。即ち、<受け入れられて>、<実感されて>、<選ばれ続ける>ブランドになってゆくというプロセスです。
企画・開発・マーケティングの業務についたばかりの方は、「どうやったら商品が<受け入れられる>だろう?」ということを一生懸命に考えるはずです。多くの人に受け入れてもらえるアイデア、それをうまく表現するネーミング・ブランド名・商品名、買いやすくてリーズナブルな価格設定。そんなことを考えながらコンセプト・アイデアを練ります。
コンセプト・アイデアと呼ばれる物は価値提供の「種」ですので、ビジネスにおいて非常に大事です。でも、そんなに難しいものではなく、「私だったらこういうものが欲しい」「こういうものがあったら夫が喜ぶのでは?」「この商品、ここを変えたらもっと使いやすいのに。。」という感じに、生活者として感じる疑問や欲求を<仮説>としてリスト化する事がスタートです。世の中に正解と言い切れる事などないので、仮説をどれだけ出しても損はなし。自由な発想で良いのです。
ただし、仮説的に考えられたコンセプト・アイデアは人々の眼には見えないし、人々は触る事ができません。良いアイデアであってもお客様に喜んで頂く為には、現実味・リアリティをもって体感してもらえる状態に作り上げなければならない。これが<実感される>状態を作る難しさです。
巷で日本のものづくり、という文脈が語られる時、それは液晶パネルの鮮明さ、車のエンジンの出力など、物性的な性質や製造プロセスを説明している場合が多いです。そこにはコンセプトやアイデア作りの話は含まれていないように見えますが、どんな商品やサービスだって実は最初に仮説的なアイデアの「種」があります。
アイデアの「種」がどのくらい完璧に具現化できているか、が事業運営上の肝。スティーブ・ジョブスがiphone開発に際して、何度も何度も親指でのタッチパネルの操作性を直させたのは有名な話です。彼は1ユーザーの視点で、そこを妥協しては<実感されない>という事が直感的に分かっていたのだと思います。
そして、商品が世に生み出される時のもう一つのハードルが、競争相手の存在です。発売前に先を越される場合もあれば、発売後に追随されることもあるでしょう。同じ情報に触れている事業家は同じようなアイデアにたどり着く事が多い。競争相手に対して<選ばれ続ける>状態を作り出し、その状態を維持してゆく事。生み出したら終わりではなく、常に動向を見守り続けなければなりません。子供を自立するまで見守るのと一緒ですね。
愛され続けるブランド・商品には普遍の真理(Universal Truth)があり、それは一見するとシンプルです。でも実はシンプルだから強い。そして、そのコアの価値を長年守り続けてきた企業努力がブランドを支えています。「福砂屋」のカステラ、「とらや」の羊羹、どれも根強いファンに支えられ不動の地位を築いている老舗ブランドですが、その長い年月で育まれたブランド価値は、簡単に崩せるものではありません。
モノづくりの「種」はもちろん大事ですが、それを研究者やエンジニア、クリエイターなどのメンバーを巻き込んで<実感される>価値に仕上げてゆく。そしてその商品が<選ばれ続ける>状態になるまで、見守って、育て上げてゆく。これがモノづくりのプロセスであり、そのリーダーシップをとる人が事業家・マーケッターと呼ばれる人だと思います。
その仕事は責任が重いからこそ、計り知れない達成感を味わう事ができるものです。僕自身もプロジェクトを通して何度も味わって来ましたが、事業に携わる皆さんには、そんな「モノづくりの醍醐味」沢山味わって欲しいと思います。それが結果的に人間としての成長にも繋がり、ひいてはお客様に提供する価値の最大化に繋がるはずです。